アイルランドは大好きな国。なにがなくても<島国>ということだけで私には十分。それが変化にとんだ地形、美しい緑の国なのだから思い出すだけで胸がいっぱいになる。でも、もう行くことはあるまい、遥かに想うだけ、と覚悟していたが、ロマネスクの旅の企画ができたおかげで 今ひとたびアイルランド、という贅沢を自分許すことにした。
旅程表を見ると、アイルランドの見どころには教会遺跡も含まれるためか再訪の場所も多かったが、「ライアンの娘」の撮影地ディングル半島、写本の製作地ダロウ、ケルズなどが入っていることが魅力だったのが参加の決め手。
教会遺跡なども、時間を十分にとってくださって丁寧に観てまわる旅だった。
利用したホテルは水回りに不満があったとはいえ、どこもお部屋は広く快適だった。
行く前にお天気をチェック、毎日のように傘マークで、がっかりだったが、行ってみると一日中降る、ということはなくて観光中本格的に降られたのは2回くらい。あとはほぼ小雨かバスから降りると晴れる、といった調子だった。(アイルランドでは今日のお天気は雨、曇り、晴れ といっておけば間違いないとか)
2002年の旅日記も 「旅路はるか」にのせてあるが、写真が暗くて気に入っていない。ヴィデオカメラからのカットが多かったからと思い、今回こそ明るくバリッとした写真を、と思ったがやはり暗い。曇り空だからだ。(手振れも多い!腕の悪さも相変わらず、またどうしてこちらの角度から撮っておかなかったのか、という後悔も多々)
アイルランドの初期キリスト教遺跡と言えば人里離れた場所に建てたビーハイブハットと言われる 蜂の巣を逆さに伏せたような石の小屋が有名。
行く前は、ああいうところの生活は寂しく厳しいものだろうと想像していた。現地では修道士の宗教心におもいをいたすことになるつもりだったが、美しい緑と羊や山羊が棲息しているさまを見ると逆にこういう生活も悪くないのではないか、と思ってしまった。(スペインの荒れ野の暮らしのほうがずっと壮絶な気がした)
緑の殉教のつもりが殉教とならなかったということもよく分かる。
最後の日、テンプルバーで食事できたのも、ダブリンのすてきな思い出。
もう行かないアイルランド、ダブリンではもう一日、フリータイムがほしかった!!
それにしても 幸せな75歳の始まり となった。
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5月末から6月、日本なら夏物を着る時期だが、
長袖Tシャツに薄手ロングカーディガンで バスからおりるときにはコートを羽織る、といった服装。 コートは時に薄手ダウン。しっかりしたダウンの方もいらした。アイルランドは夏でも20℃をこえることはあまりなく、逆に冬は雪が降ることもあまりないそうだ。
アイルランドは好きなので、アイルランドが舞台となる映画は気が付くたびに観た。(前回とダブルものもあるが)
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ライアンの娘 デヴィッド・ リーン監督
恋を恋するような娘ロージーはがさつな村人を嫌って、かなり年上の温厚な教師と結婚する。でも夫はどうもものたりないと感じているところ、あるきっかけから知り合ったイギリス軍将校と恋に落ちる。
以前観たときは不倫映画と思っていたが、今回アイルランドの歴史を少しだけ詳しく知ると、不倫そのものより、相手がイギリス軍将校だったことがより大きな問題だったことに気がついた。独立戦争に翻弄された恋だったのだ。夫役である下がり眉のロバート・ミッチャムも印象的だ。
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マイケル・コリンズ ニール・ジョーダン監督
独立運動の闘士の生涯、1920年前後のアイルランドの政治的状況を知るのに、もっとも適した映画かもしない。
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プルートで朝食を ニール・ジョーダン監督
捨て子でゲイのパトリック(この名前も何やら象徴的)きれいなドレスが大好き。母を探して家を出る。行きずりの男といろいろな仕事をして、流されるに任せる人生。ノーテンキにただただ生きている。成り行きでIRA とかかわりをもつなど、次に何が起こるか予測がつかない。この人生もアイルランドそのものの象徴かと思ったりしながら見た。
笑えたのは神父である父親を演じるのがリーアム・ニースンであること。同じ監督が革命の闘士を何とも情けなく気の弱い神父役に起用している。お気楽であるように見えて、奥は深い。
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クライングゲーム これもニール・ジョーダン作品。記憶がうすれていて、オンデマンドでも確認できないので感想なし、IRA 関連の哀しく観ていてつらくなる映画だった。
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麦の穂を揺らす風 ケン・ローチ監督
1920年前後の独立闘争の映画。裏切者と分かった幼馴染を撃たなくてはならない、立場の違いから兄弟でも殺さなければならない、などみているほうもつらくて苦しい映画。
妖精伝説をあつかったものとして
*フィオナの海 があった。 今回オンデマンドのニール・ジョーダンのリストをみていて
*オンディーヌ 海辺の恋人 をみつけたので観た。フィオナの海のリメイクかとおもったが、だまされた。最後でそうだったの?でもこれはこれで今日的解釈、いいではないか。アイルランドの海辺の景色が美しくストーリー的にも面白くて楽しめた。
カトリックの女性観を扱ったものとして
* あの子を抱きしめる日まで
* ローズの秘密の頁
今回の旅に関連する
* ブレンダンとケルズの秘密
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読んだ本
参考書 案内書
* 図説 ケルトの歴史 河出書房新社
* 図説 アイルランド 河出書房新社
* アイルランドに行きたい 新潮社 とんぼの本
* ケルト美術 鶴岡真弓著 ちくま学芸文庫
* ケルト 石の遺跡たち 堀惇一著 筑摩書房
* ケルトの島・アイルランド 堀惇一著 ちくま文庫
* 聖者と学僧の島 トマス・カヒル著 青土社
西ローマが滅んだあと、文明の灯を守ったのはアイルランドだった。ローマ末期のヨーロッパか、 神話時代からのアイルランド、アイルランド初期キリスト教時代のことがよくわかる。
* アイルズ ノーマン・デイヴィス著 共同通信社
イングランド、スコットランド、ウエールズ、アイルランドを包含する英国史。
読み物
* 修道女フィデルマシリーズ ピーター・トレメイン 創元推理文庫
日記中でもふれたが、修道女が探偵役のミステリー社会状況がよくわかる。著者はケルト学者なので、7世紀半ばのアイルランド社会について詳しいのだと思う。上下も数えると現在16冊。
* アイルランド幻想 ピーター・トレメイン 光文社文庫
アイルランドの民間伝承を素材にした幻想小説
*ウィリアム・トレヴァーの 短編小説
長編小説としては 前回にあげた 『フールズ・オブ・フォーチュン』
ウィリアム・トレヴァーは短編小説の名手、稀代のストーリーテーラーと言われているだけあって、彼の短編はいい。辛口でゾクリとするところがある。私がもっているのは三冊、アイルランド・ストーリーズは今回買ったものでまだ途中、 どれも間違いない名品だと思う。
『聖母の贈り物』 国書刊行会
『アイルランド・ストーリーズ』 国書刊行会
『密会』 新潮クレスト・ブックス
『聖母の贈り物』に収められている 聖母の贈り物、という一篇は 夢にあらわれた神のお告げを受け、修道院へさらにアイルランド中をくまなくあるいて孤島での生活を送るミハールの話である。
スケリグ・マイケルのような孤島で自分で石を積んで小屋を建てる。<海水から塩を採ってたくわえ、夏場に捕った魚を塩漬けにして保存した。修道院から持ってきた種を発芽させて以来丹精して育てた穀物は、来る年も来る年も稔りをもたらした。ブルーベリーの茂みがあり、世話を焼いてふやしたイラクさも育ち、海中で太陽を浴びて食べごろに熟する海藻もあった> と孤島での独居生活の様子が書かれている。ディングル半島を思い出す。
妖精ものがたりなら
* ケルトの薄明 イエイツ ちくま文庫
ケルト関係は前回の旅行でかなり買い、新しいものはなく、読み返してもいないので、このあたりにしておく
ミステリーとして
* アイルランドの柩 カバーの写真が ディザート・オディのハイクロス
* アイルランドの棺 カバーの写真が モナスターボイスのハイクロス
いずれもエリン・ハート著 ランダムハウス講談社
(この表紙、いまではどこだかパッとわかる)湿原(クロンファートからそう遠くはなさそう)から発見された古い遺体と最近の遺体、考古学者と解剖学者のコンビが謎を解き明かす。歴史の絡んだミステリー
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おみやげ、 今回はアイルランド小物(妖精のお人形や ケルト模様の ティ―タオルなど)を買う所もなく、また前回充分買ったし、ということで大した買い物はしていない。本文中にも書いたが、ブッシュミルズやピアス、気にいっているのはビニールバッグ(25×25 厚さ11p)最近は リーディング眼鏡をもち歩き、サングラスもある。いずれもケースが大きいのでこのくらいのバッグが重宝するのだ。スーパーで買ったチーズはとても美味しかった。蜂蜜は普通の味。
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よき旅仲間と添乗員に恵まれたおかげで楽しい旅ができ、またこの旅日記を書くのに添乗員Mさんの旅日記がとても役に立ったこと感謝しております。
以上とりとめもなく書いてしまいましたが、これでおしまい。
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