何時の旅でもそうなのだが、 これは収穫だった、という部分と心残りの部分がある。
最近の私の旅行はヨーロッパの中世や、中近東の古代遺跡を訪ねる旅が主である。 いわば時間を遡る旅だ。 しかし、今回訪れたベルリンは 戦後の東西冷戦を体現していた町である。殊に一人で訪ねたベルナウアー街は重く心に残った。
ポツダムも第二次大戦の戦後処理についての会談が行なわれた場所だ。
ふだん世界情勢などあまり気にもしないのだが、まさに現代史の現場を行く旅でとても刺激的だった。
残念だったのは美術館の時間が短かったこと。 でも短いながらも、気になっていた絵をみることは出来た。
旅行前・後に読んだ本と観た映画
お断りするまでもないことですが、たまたま私の手にしたり、観ることができた範囲内で、これは、とおもったものをあげたにすぎません。
参考書
『神聖ローマ帝国』 菊池良生 講談社新書
神聖ローマ帝国、 歴史に明るくなければ、 ドイツのことだとは気がつかないかもしれない。 何が神聖なのか、何がローマ的なのかを明らかにすべく、9世紀のカール大帝から1806年の帝国滅亡までのドイツの歴史を 皇帝列伝 形式でたどる。
『物語 ドイツの歴史』阿部謹也 中公新書
何年か前に、氏の講演を聴いたことがある、上品で温厚そうな紳士という風貌、でも舌鋒は鋭かった。 日本には世間様はあっても社会はない、とか、 自画像についての話、などとても新鮮であったので、早速何冊か著書を買い求めて読んだが、今回は 旅行前にこれを買って読んだ。
中学時代修道院の施設で過ごした経験を持ち、社会史、という分野を切り開いた方だけに、前掲の書が、皇帝という、いわば歴史的個人を通して書かれているのと対照的に (もちろん歴史だから、皇帝たちの動き、働きについても述べられているが)農民、市民の生活や意識がどうであったか、宗教改革などにも多くのページが費やされている。また、現在出稼ぎ労働者の増加が問題になっているが、それとアジール権に関することにまで言及されている。
『ドイツ人の心』 高橋義人 岩波新書
ドイツ人とメランコリーとの関係について、その風土的要因としてドイツの深い森のことが書かれている。
(ワイマルにあるゲーテのガルテンハウスの奥も森だった)
ユダヤ人関係
『ドイツとユダヤ人』 大沢武雄 講談社新書
『ドイツにおけるユダヤ人の歴史』 レーオ・ズィーヴェルス 教育開発研究所
紀元一世紀ごろから ドイツにはユダヤ人が住んでいた。 1096年の第一回十字軍までは、 宗教の違い、そこからくる、食生活や習慣の違いにもかかわらず、 ドイツ人と共同生活をしていた。 十字軍の従軍者たちはユダヤ教会を襲撃し 、持てるものを全てとりあげ、 逆らうものは殺害した。
この時からユダヤ人の苦難の歴史が始まる。
狭いゲットーに閉じ込め、一年に結婚できる人数まで決められた(人数を増やさないよう、しかし、人口は増え衛生状態は極めて悪かった)
しかし、 特に商業、交易の才に秀でた、ユダヤ人は 王や貴族などに重用され、限られた分野ではあったが、富をたくわえていった。その過程では、お金をかりてお金を借りて返せなければ踏み倒す、、ゲットーを焼き討ちにする、ペストなど流行ると全てユダヤ人のせいにする。
こういう迫害の歴史を読むとヒトラーが突然変異的に現れたのではないのだ、と思えてくる。
ドイツは藝術の国、科学の国、理性的で優れた頭脳の持ち主のいる国である反面、ナチの台頭を許すような無知蒙昧で無教養な人間の集団としか思えないようなところがある。何故なのか。上述の阿部謹也氏や高橋義人氏の本とも関連するが、もっとじっくり考えてみたい。
『ドイツ歴史の旅』 坂井栄八郎 朝日選書
『母なる大地』 加賀乙彦 潮出版社
この二冊は東ドイツ時代の旅行記
『ドイツ 古都と古城と聖堂』魚住昌良 山川出版社 世界歴史の旅
ドイツの歴史について、まず述べてあり、その歴史を辿るように町を巡る、ガイドブックではあるが、ホテル情報などというのではなく歴史中心のガイド(ドイツについての基本的知識を得るためには、地球の歩き方、とこれと二冊あればよいという気がする)
読み物
『寒い国から帰ってきたスパイ』 ジョン・ル・カレ
ベルリンの壁、というと思い出すのがこの小説。行く前にほぼ四十年ぶりに読み返したが、スパイの悲哀が書かれていて、 現在なお活躍中の ル・カレの傑作の一つだと改めて思った。
『さらばベルリン』 ジョゼフ・キャノン
ポツダム会談当時のベルリンが舞台、映画化されたが、 小説の方が断然面白い。
爆撃されたベルリンが舞台で、ホテル・アドロンや、ポツダムのツィツェーリエンホフ宮殿の前の湖 が出てくるので、旅行の楽しみが増した。しかし場所の楽しみだけで読むようなものではない。ドイツ人の頭脳を巡っての東西の駆け引きなど実に面白い。
『ベルリンの秋』 春江一也
東西冷戦から壁崩壊までの主に東ドイツが舞台。
作者はもと外交官で、 当時のことを書くのに小説仕立てにした、とあとがきでいっている。 政治情勢も詳しいが小説なので、当時の生活事情もわかる。
これを読んでライプツィヒのニコライ教会 のことを知り、この町のバッハゆかりのトーマス教会より、ニコライ教会の方をみたくなった。
『ワイマルのロッテ』 トーマス・マン 岩波文庫
『若きウェルテルの悩み』の悲恋の相手のシャルロッテ・ケストナーが娘と小間使いを伴って、ワイマルのエレファント旅館にやってくる。そこへ次々と来客、延々とおしゃべりを始める。(実を言うと、十数年前に途中まで読んで、今回の旅行のためにまた読み始めたが、まだ読みおわっていないのでこれ以上書きようがないが、このおしゃべりからゲーテの姿が浮かび上がることになっている)
ガイドブック
地球の歩き方はもちろん、
『ベルリン、ドレスデン』 旅名人ブックス 日経BP企画
観た映画
戦後のドイツを知るための一つのてだてとして
『白バラの祈り』
ミュンヘンの女子大生ゾフィーが兄の仲間たちと、非暴力でナチに抵抗、「打倒ヒットラー」のビラまきをした。良心に従い考えを変えなかったために死刑にされた実話の映画化。
信ずるところに殉ずるという生き方は、ちょっと真似のできないことと尊敬するが、これを映画にまでしたてる、(感情に訴えるものにする)というのが私にはひっかかる。
カルチャーのユダヤの歴史講座の先生にそのことを話したら、やはり、映画化にはカトリック教会の強い意志が働いていたそうだ。これと関連するが、『せめて一時間だけでも』 ペーター・シュナイダー著 という本も読んだ。この本の帯には ナチス政権下、ベルリンの地下潜伏から奇跡的生還をとげた、、、彼を生かしたのは、ドイツ人市民たちのささやかな勇気だった とある。アンネ・フランクが隠れ家で生活できたのも助ける人たちがいたから、ということ誰でもは知っているが、焦点は可哀そうなアンネで、協力者ではなかった。流れが変わった、というわけではないのかもしれないが、どうも気になる。
『さらばベルリン』 本のところでふれた。『第三の男』や『カサブランカ』を意識して作ったということがなほどと思わせるようなつくり。
『ベルリン、天使の詩』
天使が黒いオーバーを着た中年の男、で戦勝記念碑の上で一休みしている、という場面がまず、印象的。 ストーリーのことはおいておくとして 壁のある時期のベルリンが舞台で、壁がどうなっているのかが良く分かるのがいい。
『善き人のためのソナタ』
旧東独の人々は統一前は自由はなくても仕事はあったが、今は失業者が非常に多い。そのせいか東独時代を懐かしむ風潮がでてきている。それに対して、東独時代の自由を奪われた状況を忘れてはならない、という思いで作った映画だそうだ。
シュタージの局員が、監視対象者の生き方に惹かれていくのだが、 背筋のまっすぐのびた、シュタージのヴィースラー-大尉が印象的。ラストもいい。
旅行中、シュタージでも高官は生き残り、議員になったりしているが、下級役人は絶対に公的な仕事には就けない、とガイドが言っていたが、それをなるほどと思わせられるシーンがあった。
このヴィースラー大尉を演じた俳優ウルリッヒ・ミューエが癌で亡くなったことを旅行直前のニュースで知った。
お土産
中近東のように珍しいものはありません。 日本でも買えるようなものばかり。ザイフェンのお人形もクリスマス近くなると、デパートで売っている。

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マイセンのカップ
(ネットで探すと現地と同じ位のお値段で買えるようです。 割れ物だから日本で、という考えもあるかもしれないが、
品物だけでなく旅を思い出すよすがともなるので、買いました) |

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ザイフェンの煙出し人形 高さ23p |
ザイフェンの教会と聖歌隊 高さ15センチ |

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ザイフェンで買ったクリスマス用紙ナプキン |

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アンペルマングッズいろいろ ぬいぐるみ |
マウスパッド |

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マグネット |
マスコット |

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これは片側が緑の〈進め〉で、もう片側が
赤の〈止まれ〉、ドアにかけて、
入ってもいい、とか入らないで、の合図にする。 |
エコバッグ |
娘にもおみやげにした。当然、いつも赤の、ドント・ディスターブにするのかと思ったら、「ホテルで、もう片方は何と書いてあるか知っている?ハウスクリーニング・プリーズよ」。かくして、いつも緑にして出かけている。 |

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ドレスデンの聖十字架教会の聖歌隊のCD |
ベルリン、絵画館のクリストゥスの絵の解説CD |
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クリスマスオーナメント |
ピューター製の飾り(ザイフェンはもと錫の産地) |
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マイセンのカレンダー |
ライプニッツのニコライ教会のマウスパッド |
これはお土産ではないが
空港内の免税店でワインなどの液体物を買うと、この袋にいれて封をして日本の着くまで開けないようにと言って渡される。
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免税店の液体物を入れる袋 |
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