おわりに


この時期イランに行くの?
旅行は本を読んだり、映画を見たり、人の話しを聞いたりして、その国への関心が膨らんできた時がその人にとっての旬。できればそういう折を逃さず行きたい。このタイミングの悪い時期に私のイランへの思いがふくらんでしまった。
周りの人のみならず、自分でも心配だった。航空機、濃縮ウランをめぐる世界情勢、それに地震だっておきるかもしれない。
非常に不安ではあったが、行ってみたさが勝った。 そうして結果は?すべて杞憂にすぎなかった。
八日という日数ではかなりの強行軍で、ゆっくりひたる時間はなかったものの見ることになっていたものは見られた。
遺跡や建物、どれも期待を裏切らない素晴らしさだったが、それらの観光以上に感動したのは、イラン人のくったくない明るい笑顔と、砂漠の真ん中でお水がふんだんに出る、ということだった。

日本でのイラン人というと、ひところ犯罪のニュースでよく出てきて、ほんの少数の人であるはずなのに、イラン人=悪い人というイメージが出来上がってしまっている。 
ところが実際にイランに来てみると、子供たちはあけっぴろげな笑顔を見せて、ハロー、アイラブユーと知っている限りの英語をしゃべって「写真を撮って」とせがむ。
子供だけではない、赤ちゃんを抱いた女性が添乗員に、自分の赤ちゃんを差し出して、赤ちゃんを抱いているところを写真に撮らせて欲しい、と言ってきたのには、本当に驚いてしまった。イスラム原理主義でがんじがらめになっている、などとはとても思えない。
私は反戦運動家などではないが、この素朴で人懐こい人々を見ていると、戦争は絶対にいけない、月並みな表現ではあるが、この人達の瞳を曇らせるようなことは決して起こってほしくないという思いを強く持った。

旅行前に見たイラン映画、『運動靴と赤い金魚』は、失くしたからといって靴もすぐには買えないような、貧しい家の兄妹の話だった。何となく貧しい人々の国、というイメージを持っていたが、砂漠のトイレで水がちゃんと出る、ということはこの国は実は豊かな国なのではないか、あなどってはいけないという気持ちがした。(今回行った地域はイランの観光地としてはとてもメジャーなところなので、ほかの地域ではどうだか分からない。でも去年行ったエジプトではどこでもお水が出たわけではなかった) 
中東では、殆ど観光客がいないようなところでも、どこからともなく「ワン・ダラー」「駱駝はらくだー」などの物売り、客引きが寄ってくるが、イランではそういうことは殆どなかった。(一度だけ、イスファハーンで2.3人の子供の物売りが寄ってきたことはあったが)
アリーさんはガイド歴11年だそうだが、その間、一度も盗難事件などはなかったそうだ。治安はいいのだ。
矢張り、オイルマネーのおかげなのだろうか。それともイスラムの教えによるのだろうか。
アリーさんに聞いてみたら、貧富の差は大きいそうだ。


読んだ本
 読み物
* 『火の路』  松本清張
昭和46年6月から49年10月まで朝日新聞に連載されていて、そのときの題は『火の回路』であった。イランのことが出てきた、という程度の記憶しかなかったが、文春文庫に入っていたので、改めて読んでみた。
話は清張らしい、ちょっと暗い推理小説の体裁をとっているが、飛鳥の石造物がゾロアスター教と関連があるのではないかとイランに行くところが出てくるので書かれた当時と今のイランを比較する楽しみもある。ヤズドに拝火教の神殿を訪ねたり、沈黙の塔に登ったりするのだが、沈黙の塔にまだ骨が散らばっているところが出てくる。これはフィクションかな?
ミーナ・カーリー(お土産写真参照)を買おうという気になったのはこの本の影響。

* 『勲爵士シャルダンの生涯』  羽田正 著  中央公論新社
 (この著者のお話をカルチャーセンターで聞いたこともイラン旅行のきっかけになっている)
17世紀、サファービー朝時代に二度(アッバース二世、とソレーマン王の時)ペルシャ旅行をして、旅行記を表した宝石商人シャルダンの話。
 シャルダンはヨーロッパの宝飾品をペルシャ、インドに運び、それを売った資金でダイアモンドを買ってヨーロッパに持ち帰るという商売をした人。
大変な旅行をしただけではない。プロテスタントだったので「ナントの勅令廃止」によりフランスにいられなくなり、イギリスに渡って勲爵士にまでなる、という波乱に富む生涯を送った人である。
サファービー朝ペルシャのことがよく分かると同時に、それ以外の彼の人生そのものも面白い。
現在はイスラーム原理主義で、イスラム圏=不寛容、不自由と言われているが、17世紀のヨーロッパ=不寛容、不自由だった実態についても述べられていて、そういう点からも興味深かった。

歴史を知るために
* 中央公論社の 『世界の歴史 第四巻』 アケメネス朝、ササーン朝のことが扱われている
           『世界の歴史 第十五巻』 サファービー朝
* 講談社現代新書  『新書イスラームの世界史』 の一冊目、二冊目 (三冊組のうち)
* 創元社  知の発見叢書  『ペルシャ帝国 』 ダレイオスの話が中心
* ヘロドトゥス 『歴史 』(岩波文庫、全三冊)ヘロドトゥスは紀元前484年ごろ〜430年以後 の人
   『イングリッシュ・ペイシェント』という映画で、瀕死の主人公が唯一携えていた書物がこれだった。
実は今読んでいる最中。古典なので敬遠していたがなかなか面白い。映画に出てくるリディアのギュゲス王のエピソードがこの本の最初にでてくる。
キュロス大王からダレイオスやクセルクセスなどアケメネス朝の王が登場する。
  テレビは勿論写真もたいしてない時代に、異国への思いは 人の話や、こういう書物によって育まれたのだろう。 映像で見るより想像力がかきたてられて、旅は不便でも我々の何倍もの感動を味わったことと思う。


お土産をいくつか

ココナツ(?)入りの甘いお菓子

ガズ ビスタチオ入りヌガーだが、粉のまぶしすぎで美味しくなかった。 飛行機で配られたものの方が美味しかった

ナザーレ 氷砂糖をサフラン入りの蜜で固めたような甘さ。棒についていて、紅茶をこれでかき混ぜて甘くする。すぐ棒から抜け落ちて紅茶が大甘になった。

ミーナ・カーリー 金属のお皿や壺にエナメルで彩色したもの 手描きの方が高くて、左のは19センチ径 で形も凝っているので50ドルくらいだったが。小さいのはずっと安い。

ショール 二枚とも綿で77x205cm 大判だが薄手なので頭からかぶっても肩がこることはないのではないかと思う。製品によっては裏の糸がグサグサで引っ掛けてつれそう。幅広なので二つ折りにすれば大丈夫。 ともかくたった10ドルだったのをプライスダウンしてもらったので文句はいえない。ヤズドの金曜モスクの前のお土産物屋さんで買った。右のショールの柄にXの飾り文字のような模様があるが、これがヤズドのマークらしいことを言っていた。スカーフは必需品なのでどこでも買えるがここのが柄が一番良かった。 お薦めナンバーワン。4枚買ったが10枚くらい買っておけばよかったと後悔している。

アイライナー入れ、アイライナーをいれるつもりはないが飾りとして

タイル

ペルセポリスのレリーフ などこれら三点はテヘランの考古学博物館のショップで。立派な木箱入りで一つ9ドルだった

これはイラン航空で配られたアメニテイ  
皮製のポーチは使えそう

参考のため、お値段を書いたものもあるが。大体安いもので5ドル(もっと安いものもある)、10ドル〜20ドルでイランらしいお土産が色々買えます。
観光客にとってはイランの通貨はドル。お釣りもちゃんととドルでもらえます。日本円もカードもダメでした。(たぶん絨毯屋はカードがきいたのだと思いますが)
ともかくイランは買い物天国。買出し袋持参でどうぞ。