おわりに


アイルランド、この国こそ私にとってあこがれの国だった。
そのためか帰ってくると一種の達成感とそうして最後の日の不首尾に終わったアスローン行きのせいか、もう海外へ行くのをやめようかと思ったほどのむなしさ、徒労感におそわれた。
しかし、気を取り直してその後も出かけてその度に充実感を味わっているのだが。
あれから三年以上たってこのホームページをつくったのだが、矢張り懐かしい。

その後 この旅行会社は15日間のアイルランド旅行のコースもつくり、友人はそれで出かけられた。私の行かなかった場所の素晴らしさを聞かされてとても残念な思いをしている。何とかそのうちもう一度行きたいものだ。

旅行というと、素晴らしい景色や歴史ある建造物を見るなど、どちらかというと、過去の歴史を追い求めることが目的になる(少なくとも私は)。

今回も自然の美しさやケルト美術を見ることが目的だった。ところがベルファーストやロンドンデリーではカトリック地区とプロテスタント地区の分断の現場に連れていかれた。

 過去の遺跡や建造物を見ることが目的で出かけてもそこにはそこに住んでいる人の生活というものがある。
北アイルランドでは、学校もプロテスタントとカトリックと別々で、住む地域も名前こそ『ピース・ウオール』だが要するに分離壁によって、隔てられている。物見遊山気分に冷水をあびせられた気分であったが、しかし連れていってもらって本当に良かったと思っている。
見たからといって何か行動できるわけではないが、こういう現実がある、ということを実際に見て知る、とういうことは意識の底に働きかけるものがあり、働きかけられた人が多ければ、それだけでも力になるのだと思う。今、分離壁がイスラエル、パレスチナで問題を引き起こしている。

 このホームページを作成中、朝日新聞では、『そこにある壁』という特集をやっていて、北アイルランドも取り上げられていたが、タイトルは <憎悪超え交流の芽>で、敵対していた元過激派同士の交流が少しずつ広がっていることが報じられていた。 憎悪の連鎖は不毛だとは、よそ事だから気軽にいえるのであって、家族や友人が殺されたという恨みはそう簡単に晴れるものではないから、これは大変な意識変革だと思う。

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アイルランドに以行こうと思ったのは本や映画の

影響だが、実際に旅行を決めてからもアイルランドと名がつけばいろいろ読んだり見たりした。
その中からいくつか。
***本 
  遺跡関係と歴史   

* ケルト・石の遺跡たち 堀淳一著  筑摩書房 

 右の写真は表紙の一部で、クロンファートの教会

*ケルトの島・アイルランド 堀淳一著 ちくま文庫
* 図説 アイルランド 河出書房新社
* 図説 ケルトの歴史 河出書房新社

*** 小説(ミステリー)
*  非情の日 ジャック・ヒギンズ
     日記でもふれたが、IRA関連のスパイ小説。
*  アイルランドの薔薇  石持浅海 光文社
    紛争ものだが、日本人が書いたもので、アイルランド紛争についてあまり知らない日本の読者向けなのか、要領よく歴史を説明してくれているのでわかりやすい。殺人事件はあるのだが、謎解き中心で気持ちが悪くなるようなものではないので、女性でも大丈夫
そういえば、『リヴィエラを撃て』 高村薫  もラストはアイルランドだった。途中でも出てきたかどうかはおぼえていないが 

このHP作成後に出て、読んで面白かった本を追加
* 蜘蛛の巣
* 幼き子らよ、我がもとへ
  いずれも、ピーター・トレメイン著 (創元推理文庫) の修道女フィデルマ シリーズ
 7世紀半ばのアイルランドで、マンスター国王の姫君であり、法廷弁護士の修道女フィデルマがブリテン島南部のサクソン出身の修道士エイダルフとともに事件解決にあたる探偵小説だが、単に謎解きだけでなく当時の世界がよく書かれていて、古代末期というか、初期中世のアイルランドの歴史に関心のある人にとっては非常に興味深く読める本である。邦訳はまだこの2点だが英語版はすでに18冊(08年3月時点で)出ていて、アマゾンなどで買うことができる。原書で読んでいる娘によると、フィデルマはウイットビーやローマにいったり、スペインに巡礼にいったり、またフィデルマとエイダルフの関係がどうとか、とても気になることを言っている。

* アイルランドの棺 エリン・ハート著 ランダムハウス講談社 
 話そのものは現代のアイルランドで解剖学博士と考古学者が探偵役。クロムウエルによるアイルランド征服当時の事件が 発掘により浮かびあがってきて、アイルランドの歴史に興味のある者にとっては面白く読める本だった。


***  童話
   * O・Rメリング の作品
 現在、この作者の本は講談社から、五冊出ている。全部持っているがその中で、私の好みからいうと、
 『歌う石』 と『妖精王の月』がお薦め
    余談だが、堀淳一の『ケルトの島・アイルランド』のニューグレンジを訪ねるところで、アイルランド生まれだが、今はカナダにいて、ケルト文化を研究しているという若い女性と出会ったことが書かれているがもしかしたら、メリングだったのではないか、などと思ってている。

***  映画と小説
 *ダブリンの市民 より 『死者たち』 ジョイス 集英社
 *フールズ・オブ・フォーチュン  ウィリアム・トレヴァー 論創社
   映画と小説では最後の方が違うがそれぞれいい。

*** 映画
  * フィオナの海  妖精伝説にもとずく話だが、暗い海の景色が素晴らしい
  * ナッシング・パーソナル 紛争もの 主演がフィオナの海の少女ジェニー・コートニー
  * 白馬伝説  普通のアイルランド人とティンカー(ジプシー)の間に生まれた馬好きの少年の話 これも 景色が素晴らしい
  *マイケル・コリンズ
  *ライアンの娘
  *フィオナが恋した頃 アメリカ人の高校教師が扱いにくくなってきた息子とアイルランドへルーツ探し、父と母の身分違いのための悲恋を知る、

 アイルランドの映画はどれも景色が綺麗