7時
明るくなってきたので、散歩に出る。
昨日ここに来る時見えた教会を目指す。
カルノー(名前は、正しくないかも知れない)
道は、緩くカーブしているが、平坦で、歩き安い。誰も歩いていないので、少し不安。
5,6分、歩く。左手山側は、所々、別荘のような、家がある。数人ジョッギングをしている。犬がでてきて、追いかけている。右手は、斜面で、下がっているが、そこに、白壁でわらぶきの家が、数軒。壊れかけているのが、風情がある。大輪のマーガレットが咲いている。
10分ほどで村。一つ星くらいの、ホテル数軒、学生が、合宿で利用するような所のようだ。
あとは民家。教会があると思われるほうへまわりこんでいくと、あった。
ひっそりとして、誰もいない。修復の手が入ってないと思われるロマネスクの教会。
門の扉を開けて、前庭に入る。入り口には、素人が彫ったとしか思えないような、稚拙だが ほほえましくなるような、磔刑のキリスト。 閉まっていて教会の中には入れないが、静かな朝 たった一人で、小さな村の教会の前で、気持ちのよい時間を過ごすことが出来てとても幸せな気持ちだった。

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左の崖が壁になっているらしい。そこに階段がある
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左の写真の横にこの塔がある
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入り口の上のキリスト像
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谷の 向こうには、泊まっているパラドール、その向こうには、ピレネーの山々。

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教会のある村
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教会の前の家のおばさんが、戸を開けて、ネコにえさをやりながらこちらを見ている。不審げだが、笑いかけると、ほんの少し、顔をくずす。自分たちの教会を見に来てくれて、うれしい、といった感じだった。
散歩に出る時は、上に薄いジャケットを着ていたが、帰りは脱ぐほど。今日も天気が良くて暑くなりそう。
もっとゆっくりしていたかったが、8時に戻ると同室者に言ってあったので、いそいで帰る。
朝食後、9時出発
交通の便の良くない山奥にもかかわらず、このあたりは、ロマネスクの教会が数多くある。そこには、(殆どが、保護のためにカタルーニャ美術館にもっていかれてしまったが)、素晴らしいフレスコ画や彫刻作品がある。
それはなぜなのか。現地のガイドさんによると
11世紀頃、ピレネーの村々では、イスラムなどの恐れから、アラゴン王に庇護を求め、王はキリスト教徒になるのなら守ってやる、と言ったそうで、その証に、村々はそれぞれ、教会を建てたのだが、丁度、ロマネスク時代だったのでロマネスク教会が、これほど、あちこちに建てられることになったのだという。 バルセロナが交易が盛んだったことで、このあたりもお金のある人がいたらしく、第一級の絵師を招くことも出来たそうだ。
異説もある。<レコンキスタ時代に兵士として働いた報酬やイスラム占領地からの略奪により、富がたくわえられ、教会は戦死した兵の鎮魂のため>鈴木孝壽著 『カタルーニャ美術館物語』 筑摩書房 に詳しい。
5キロメートルのヴィエリャトンネルを抜けて、川沿いに行く。一時間ほどでタウール。標高1400m
まず、サン・クリメン教会へ。1123年12月10日献堂。
野原に一つ建つ、 六層の鐘楼を持つ教会の姿はとても美しい。
ただ、周りの道は整備され、山奥の鄙びた、という雰囲気はない。それだからこそ、ツアーでも来られるのだが。
サン。クリメン教会の中は、薄暗く、柱などは、昔のままのようで、木の天井。
後陣には あの、(カタルーニャ美術館に本物がある)『荘厳のキリスト』の複製が描かれているが、キリストの上の(神の手)を描き忘れたというのが、何ともおかしく、また、だからといって、描きたしてもない、というのがまたいい。
下の写真はカメラで撮り忘れて、ヴィデオの一こまからなので、はっきりしないが、この座った足。普通男性はこのように膝を開いてこしかけるのだから、特に特徴的とは言えないと思うが、これを作成中、新聞に奈良市で発見された(7世紀末、白鳳期寺院の金堂跡とみられる場所で)土製レリーフの写真が出ていた。仏像については何も知らないが、このように腰掛けているのは珍しいのではないか。足の形が、このサン・クリメンの 荘厳のキリストと同じいうのが、面白い。ついでに、先年訪ねた、トゥールーズのサンセルナン教会のキリスト像。これとも衣や足の形が似ている。奈良の方がずっと古い。図像の東西伝播 という点で、面白いと思った。

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奈良、御所市のレリーフ サンセルナンの荘厳のキリスト
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鐘楼にも、登ってみた。
梯子段の幅を少し広げたような階段で、登りはこわくはなかったが、降りるときのことを思って 不安になりながら、あがっていった。
上は、見晴らしがいい。周りを山々に囲まれて、本当に いい所。

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鐘楼内部
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鐘楼からの眺め
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案外、楽におりられた。幅がせまいので、両手で端をつかみながら降りることが出来て怖くはなかった。
外に出ると、丁度、羊の群れ(100頭くらい?)が草をはみにいくところ。犬が走り、棒を持って おじいさんが、横を歩いていく。
それから、10分程、緩やかな坂をあがって、(こちらが、村の中心)サンタマリア聖堂へ。
ここは、1123年12月11日献堂。

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サンタマリア教会へ行く途中の家、門の彫刻が面白い
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サンタマリア教会の横
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いかにもピレネーの山の中らしい家、民宿のような、ベランダに花が咲き乱れている大きな家 などが、何軒かある。
中には、コピーの聖母像がある。
祭壇の横には、どこか、他から持ってきたらしい、柱頭再利用とおもわれるものに、花が植えてある。その彫刻が、なかなかいい。
外から見ると、教会は上の方が外に張り出している。そのうち崩壊するのではないか、と心配。
ここには、少しみやげ物やがある。あとから考えると、ここしかこのあたりではいいお店 がなかったので、もっと買っておけばよかったが、少し絵葉書を買っただけ。
もういちど、サンクリメンで、写真を撮って、ボイの谷へ。
折角ここまで来たのだから、もう少し、ロマネスクの教会を見たいと思っていたら、日程表にはなかったけれど、いくつか連れていってくださった。
12時 タウール・ボイリゾートで、散歩。
展望台 のところには何と さっきサンクリメンの前を群れをなして通っていった羊が草を食んでいる。なかには山羊もいた。
それから、少し野道をあるいて、小さな物置小屋のような、石の教会。中は、入れないが何だか物置みたい。修道士の修行の場だったらしい。
サン・キルセ聖堂(12世紀)。
野の果てに、うち捨てられたような、小さな小さな教会。こういうのが、私は好きだ。
『太陽は夜も輝く』 という映画を思い出した。
藝術新潮 8月号『スペインの歓び』 にも これは、載っていた。
ここは、眺めがよかった。

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サン・キルセ聖堂(この人はツアーの人ではありません)
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サン・クリメン教会の前でみた、羊の群れに出会った
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12時40分 ボイ村のサン・ファン教会へ。ここは、外にもフレスコ画が描かれている。(コピー)
中の側廊の上には、カタルーニャ美術館で見た、ステファンの石打がある。この絵も私の好きなものの一つなので、この教会に来られてうれしかった。

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サン・ファン教会
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ステファンの石打、ヴィデオからなので、不鮮明
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13時15分-14時20分 FONTOEVILA で昼食。 サラダ、具沢山のスープ(エクスデーリャ)
フルーツサラダ アイス、自家製ワイン
バスに少し乗って、14時30-15時20分まで、
カルデス・デ・ボイ、という、公園のようなところに行った。鉱泉が、何箇所も出ている所を、散策しながら、鉱泉を飲む。場所によって、効き目が違うそうで、みな、少しづつ飲むのだが、私はおなかが心配なので、一箇所 しか、飲まなかった。午前中、随分歩いたので疲れた。バスに乗る少し前に雨がふってきた。
16時20分 ヴィエリャの町、希望者は残って町を見る。
私は、サン・ミゲル教会が見たかったが、そこは、案内の予定にはいっていたようで、連れていっていただけた。
昔は、鄙びた村の教会だったと思うが、現在は観光地の真中である。町は周囲の山へ行く、基地のようになっており、ホテルや、商店や、レストランがひしめいている。
考えてみれば、スイスのツェルマットや、グリンデルワルトもそうだ。
教会は12世紀に建てられ、15,16世紀に拡張されている。そのせいか、鐘楼がお城のようで、不釣合いに大きい。
しかし、扉口の彫刻は、ロマネスク。
中には、ミグアランのキリスト、といわれる、木彫のキリスト。(キリスト降下像の一部)
少し苦しげ。迫力がある。実にいい。雰囲気がバッリョのキリストに似ている。
カタルーニャのロマネスクの彫刻は、実に感動的で迫力のあるものが沢山ある。荒削り、などと言ってすませられものではない。
外にでて、写真をとって、おみやげを買おうとしたが、たいしたものもないので、集合場所 へもどって、17時すぎ、ホテルに戻る。
首の周りが、少し痛い。バスで、外を見るのに、同じ方向ばかり、見ていたせいかと思ったが 少し、風邪気味かもしれない。それでこんなに疲れるのだと思い、水着を持ってきたが、スパに行くのはやめにして、(このパラドールには、スパがある。有料)6時から7時 入浴、その後部屋で休む。
8時15分ころ、着替えてロビーに降りる。スパは楽しかったらしい。ちょっと残念。
前にユーラシアでパラドールに連泊した時は、一晩は、町のレストランだったが 今回はうれしいことに、二晩目もパラドールのダイニングルーム。夕食はホテルの方が、ゆっくり出来ていいし、ここは特に雰囲気がいいので、ここで お食事が楽しめるのはとても良かった。
風邪薬を飲むつもりだったので、白ワインと、しぼったオレンジジュースを頼んだが ワインは殆ど飲まなかった。あわせて6ユーロ。
9時50分頃 部屋にもどり片付けをして10時30分ころ風邪薬を飲んで寝る。