3日目

6月6日

アルル滞在

(サントマリー・ド・ラ・メール〜サン・ジル〜サン・ロマン修道院〜モンマジュール修道院)


3時ごろ、一度目が覚めたが本格的に起きたのは5時。 

7時 朝食 いわゆるコンチネンタル、

朝食テーブル サントロフィーム教会西正面

7時半から、サン・トロフィーム教会のファサードを一人で見に行く。

古代神殿のような三角形の破風が特徴的である。
青い柱の間には聖人達。左から三人目の司教は聖トロフィムス(小さくてよく見えないが天使に司教冠を授けられている)、

右には二人の聖人がいるが、その中央よりの彫刻は聖ステファンの石打ち
(この教会はもとは聖ステファンに捧げられたが、聖トロフィムスの聖遺物を受けてサン・トロフィーム教会となった。そのため二人の聖人の像があちこちに刻まれている。
その隣(中央)は聖大ヤコブ、サンチャゴに遺骸が流れ着いたというあのヤコブである。(アルルはサンチャゴ巡礼のひとつの出発地)

朝早いせいか、土地の人が急ぎ足で通り過ぎるほかは誰もいないのでゆっくり見られた。

向かって左上にアダムとイヴ その下はミカエルの魂の計量 下の泳ぐ人みたいなのは意味不明
 中央のタンパンには栄光のキリストを中心に、四福音書記者の象徴である、 
有翼の人間(マタイ) 鷲(ヨハネ) 牡牛(ルカ)ライオン(マルコ)の彫刻 その下には12使徒
(黙示録タイプのタンパンである)

 

はっきりしないが、12使徒の下、左の柱頭には、 マリアへのお告げ 右は ご生誕
左から福音書記者ヨハネ、鍵を持つ聖ペテロ

 一番上は 天使が選ばれた者の魂を三人の族長、アブラハム、イサク、ヤコブに渡すところ、一人の族長は正面の12使徒の左

聖パウロと聖アンデレ

 上は 天使が天国の門を守り、罪人たちの群れが押しかえされているところ
フリーズ(帯状装飾) の雷門や動物の顔も面白い
また足元の怪獣はいったい何を表しているのだろうか?

アルルやサン・ジルの教会彫刻は古代ローマの影響を受けている、とよくいわれており、その例として、石棺彫刻がよく取り上げられる。 今回はアルル・プロヴァンス古代美術館に行く時間がなかったので、ひとつだけ前回の写真を載せておく。石棺の群像表現に学んでいる、という説明がよくあるので。(あまりよく撮れていないが)

8時少し前に戻る。

8時15分集合、バスのところまで、少し歩く。

今日は一昨日(マルセイユ)に出迎えてくださったO氏がガイド役。
サントロフィーム教会の前で、彫刻の説明を少々。それからアルルの町の歴史。

アルルはBC6世紀ごろギリシャ人が植民化した町で、ケルト・リグリア人住み、マッサリア(マルセイユ)に従属していた。
BC49年あのカエサルが、マッサリアを打ち破り、ローマの植民都市なった。その結果、劇場、闘技場、浴場などが造られ、私たちの宿泊しているホテルのある広場はフォーラム広場。しかし、ここは、古代のフォーラムの外周にあたり、2本のコリント式円柱と上のペディメントは2世紀の寺院の名残りだという。(前回来た時はそういう説明を聞きながら写真を撮ったのだが、今回はそこに泊まれて幸せ)

ホテル・ノール・ピニュ コリント式円柱とペディメントが付い
ている(上のサントロフィーム教会のファサードと同じ)
ホテルの横、(左写真で左に軒が見えている)には
ゴッホの絵にある『夜のカフェ


アルルは河川交通の要地として栄えたが、今から200年前ごろから衰退、現在は人口4,5万人 、怠け者の町と言われているそうだ(50人以上の企業は一社しかないので)

8時45分ごろバス、新しいバスで50人乗り。10人なので、一人2席どころか、隣の2席も占領できる。

水田


カマルグ湿原地帯を行く。
なんと水田がある。このあたりは日本が農業指導したので、お米の種類も『農林一号
湿地帯に時に、白いフラミンゴが見えるがカメラではとらえられなかった。 白い馬もいる。
 
ガイドの話。 
小麦の値段が高騰しているので、今年は休耕地が麦畑になっているところが多い。来年はさらに増えるだろう。小麦は北フランスから南フランスでも栽培されるようになったが、このあたりの小麦は良いものではなくパサパサしているので、バゲットを考えた。皮のパリパリしたところが美味しいが、あのように細長く焼くことによって香ばしくしたのだそうだ。

 
途中の水溜りが乾いているところは白っぽい。海水なので、塩だそうだ。カマルグの塩は有名、ミネラル分が多くて美味しいといわれる。 今頃6月に海水を入れると、7,8月は一滴も雨の降らないので、塩ができる。

サントマリー・ド・ラ・メール

聖女たちの流れ着いた海岸も今はレジャー基地

教会は要塞のようで、上には銃眼がある。


教会は窓がないので、とても暗くて、特に高い柱頭彫刻はよく見えなかった。
プロヴァンスのドライストーン(硬い石灰岩)で出来ている・(柔らかい石灰岩が大理石)

ここは、聖母マリアの妹のマリア・ヤコベ、大ヤコブの母のマリア・サロメとその侍女の黒人のサラマグダラのマリアとその姉のマルタたち(サント・マリーのマリーは複数形で書かれている)がユダヤ人に追放されて小船に乗せられ、サント・マリーの海岸に流れ着いた、という伝説がある。(着いたのはマルセイユという話もある) 
マグダラのマリアはサント・ボームに行ったが、マリア・サロメとマリア・ヤコベと侍女のサラはこの地にとどまった、信者たちは彼女たちの遺物を礼拝堂に納めたので、この地は巡礼地として、賑わうことになったのだ。

小舟に乗る二人のマリア 
サント・ボームへ旅立つマグダラのマリアを舟で見送った
お祭りのときにはこれが海に担ぎ出される

クリプトに降りる階段

内陣の手前に階段があり、地下に行けるようになっている。
降りてみるとそこはサラを祭ってある場所。サラは黒人だったからなのだろうかジプシーの守護聖人となり、毎年五月には非常に賑わうらしい。祭壇は一部石棺の断片からなる。祭壇の上に聖女サラのものと推定される骨が収められて箱が載っている。

何枚も豪華な衣装を着せられたサラの像が立ち、巡礼者たちがおいていった写真などが飾られていた。

サラ 捧げ物のひとつ

小舟に乗った二人のマリアの絵ろうそく

ギタリストが捧げた?


そのあと、狭い53段の階段を上がって、屋根の上に行った。海や町の眺めが良い。

地中海

家の壁に男の人の絵 絵の家の拡大

バスの場所に戻る道筋

ミレイユ像

 

オリーブの木で作った品物を売る店

ここは海ではなく潟だそうだ。フラミンゴを撮ったのだが、小さな白い点でしかない

コルシックスという花、ツヤがよくなるということで
スペイン人はこれで髪をリンスするそうだ
葦で葺いた屋根(壁で家全体は写せなかったが、壁は白い漆喰

バスの中から有名なカマルグの白い馬が見えた。

バスの中でのガイド氏のはなし
 フランスは政教分離。結婚は市役所に、二人の保証人と当人が出頭すればよい。教会は祝福を与えるだけ。

サン・ジル
11時30分〜12時15分 サン・ジル教会
アルルの次にサンチャゴを目指す巡礼たちが訪れる教会
サン・ジルは、8世紀ごろの人でもとはギリシャに住んでいたが、小舟に乗り、プロヴァンスに流れついた。 洞窟で暮らし、食べ物は雌鹿が運んできた。あるとき鹿に矢が放たれたがその矢を、ジルは飛行中に止めた。そこで、この奇跡を行った人を尊敬して、領主はこの地に大修道院を設立することにしたのだそうだ。
ここはファッサードの彫刻が有名 12世紀中葉のロマネスク 

ロマネスクの聖堂はゴシックなどに比べて小さいせいか、入り口が一つのものが多いが、ここは三つある。 アーチが三つ並ぶ形は明日行くオランジュの凱旋門の形を借りたものだといわれている。
フランス革命のときにかなり破壊されているのが惜しい。全部削ったりはしていないが、顔は殆ど削り取られている。
各入り口上部の主題はキリストサイクル。 
タンパン彫刻は左から『マギの礼拝』(つまり誕生)、栄光のキリスト、 磔刑。 

マギの礼拝、下はキリストのエルサレム入城

栄光のキリストと四福音書記者のシンボル、下は 最後の晩餐 
下左は弟子の足を洗うイエス

磔刑

タンパンの下は、イエスのエルサレム入城、最後の晩餐、十字架を背負うキリストなど。

左は ユダの裏切り 、右は神殿から悪徳商人を追い出すイエス

柱に縛られ、鞭打たれるイエス、右は十字架を担ぐイエスとローマの兵士

何故この主題が選ばれたかについては、 当時南仏では、異端とされているカタリ派の信仰が広まり、それに対して正統派の信仰を見せつける、という意図があったせいだといわれている。そうではない、という説もあるようだが、ファッサードの彫刻にこれほどまで、イエスの生涯を描いたロマネスク教会は他にないのではないか。そのことと、造られた時代から、そう解釈するのも納得がいく。いずれにせよ、ちゃんと書かれた文書でも出てこない、とカタリ派との関係あるなしの決着はつかないのであろう。

左はイエスに跪くマグダラのマリア、右は香水を買う聖女(これは磔刑の下にある)

聖ペテロに、自分を知らないと言うであろう、
と告げるイエス

右は最後の晩餐の前に
弟子(ここではペテロ)の足を洗うイエス
旧約からの図もある
右、カインが、『地の実り』を、アベルが『羊の初子』 を捧げるが、神の手は アベルにのびている

左(はっきりしないが)、 カインによるアベルの殺害
(後ろからアベルをナイフで襲っている)

サン・ジルの彫刻は、三人ないし、五人の工匠の手になる、と言われているが、上の二枚のように並べてみるとなるほどと、手の違いが分かる。私の好みから言うと、右のほうがいい。衣が駆け寄ったかのように翻って中世写本を見るようだ。

イエスの弟子たちも彫られている。

聖大ヤコブとパウロ (写真を撮りそこねたので、ゾディヤックから)

左から、 マタイ、バルトロマイ、トマス、小ヤコブ 花がカヴァイヨンのローマンアーチを思い出させる

3日目ー2に続く