5日目

サンモリッツ滞在 

セガンティーニ美術館、ソーリオ村、 コルヴァッチュ展望台、 ニーチェハウス

7月31日



まずセガンティーニ美術館へ 
有名な 三枚の絵、小さな写真ではさほどと思わずパスしようかと思ったが 折角共通入場券もあることだし、と 湖より少し上の山道を歩く。9時開館をめざして急ぐ。
30分くらいかかった。美術館の丸屋根が目印。

 
 美術館を入る前に

二階が三枚の大作「生成」「存在(自然)」「消滅() が展示されている。

半円形の壁にかけられその前に座って観賞できるよう椅子がおかれている。 
素晴らしい。圧倒されてしまった。生成の聖母子ともみえる母子の姿、首を垂れて少し間を置いて牛を曳いて歩く夫婦ものらしい二人、一日の労働に疲れているように見える、それと 雪の日に遺体を送りだそうとする黒衣の人たち、 
山の人たちの生活を描いて静かに心を揺さぶる。
絵というものは何といっても実物をみなければ、というのが実感。

  
  生成
  
 存在
  
  死

どのくらいの時間いたのであろうか。さほど長くはなかったのだが、その間一人(日本人男性だった)がほんの少し顔をのぞかせただけで、すぐに出ていきその後誰もこなかった。
これらの絵は大勢で賑々しく見る絵ではない。一人で見るべきだ。
一人でゆっくり観ることができて幸せだった。

一階は小品とセガンティーニ以外の画家の作品があった。 

考えてみるとツアーでサンモリッツに行くというのは 氷河急行にのるために泊まる程度。 ツアー客は朝早く列車に乗ってしまうので 美術館に入るひまはないのかもしれない。 ここを拠点とする山歩きの人は雨で山歩きができない日に来るのだろう。今日はお天気がいいからみんな戸外だろう。作品数も少ないので時間が少しでもあれば 絶対ここは来るべきところだ。セガンティーニの愛したこのエンガディンの地で、この三部作をみることができる幸せを味わってほしい。 

美術館入り口から眺める サンモリッツ湖も絵の余韻のためかまた違った、落ち着いたまぶしさを感じた。 

   
 セガンティーニ美術館  出てまた暫し湖を眺める

小学校のところ(バスの始発)まで戻る。

1038発でソーリオ村に向かう。
シルヴァプラナ、シルスマリアと湖をみながら進みマロヤ峠
(1815)を越える。
イロハ坂だ。この山山が凄い。ガガたる岩山が聳えたって連なっている。セガンティーニの絵のようだ。

 
 これは 帰りのバスの中から撮った写真

そこを過ぎると緑の牧草地で小さな小屋が点々とある。峠を下るとここはブレガリア谷。
途中の村を抜けていくがとても狭い道でバスが家に触れそうだ。しかしここもローマ帝国のアルプス越えのルートの一つで 三日前のユリア峠を越えるルートに通じ、クールへ抜けるのだ。これからもあちこちで実感するのだがスイスは歴史の通り道だ。

途中の村の一つに彫刻家ジャコメッティの生まれたスタンパ村があった。この村を過ぎるとプロモントーニョ村。ここでバスを乗り換えて山へ登って行く。

126 ソーリオ村

 
 
 
 
   
   
 
  

バスに乗っている人たちが行く方についていくと、この地の貴族サーリス家の屋敷だあったホテルに着いた。前のリュックをしょった人が何やら話しているが断られているらしい。宿は満員らしい。しかし他の人たちは館を左へと回って屋敷の裏に行く。ついていくと中庭でレストランになっている。私もお食事に、とおもったが なかなか注文をとりにこないし、周りをみると分量が多そうなのでやめてコーヒーだけにした。 驚いたことにここは 英語が通じない。イタリア語しかだめ。コーヒー一つはわかってもらえたがお勘定もワン・ツー・スリーが指をおりながらしか言えない。

 
屋敷の内部を少しだけ覗いた

先の予定を考えると1310のバスに乗る必要がある。 ちょこちょこっと村をあるいただけ。ここは セガンティーニが 「生成」を描いた村らしい。
当時私の日記にはここは三時間とるべき、お食事に一時間。歩いてふもとのプロントーニョ村におりるべきだった、とある。

 
 
 
 バス停付近
 
 バスの中から
   
 プロントーニョ村バス停前
ホテルのようだ
途中の村 

来た時と逆。プロントーニョ村でバスをのりかえてマロヤへ。1408着。

ここには セガンテイーニの家がある。どうしようかとおもったが開くのが15時からなのでやめて1438分発コルヴァッチ展望台行きのバスに乗る。

 
 円形の建物が セガンティーニのアトリエ

途中ズルライを通る。ニーチェがよく散歩したところだ。ここはふつうのホテルというより学校の寮みたいな建物が多かった。

 
 絵葉書 ズルライ
ニーチェが 永劫回帰の想を得た所

ロープウエイで上がる(3303) コルヴァッチュ展望台

 
 展望台から 左奥が マロヤ

360度 のパノラマ、山の名前はよくわからないが湖は三つとも見えた。

     
 左奥が マロヤ    
 
 中央右の白い点々に見える集落がサンモリッツ
 
シルヴァプラーナ湖
湖左端の平野がシルスマリア
半円形に張り出したところが シルヴァプラーナの町で 
山の間を縫って通る道が ユリア峠に通じている 
 シルヴァプラーナの向かいがズルライ

40分くらいでおりて 1648分コルヴァッチ発のバスでシルスマリアへ。 10分くらいで着いた。

ルス・マリアはニーチェが夏を過ごしたところ。 
大学時代、学会の帰りにここへ寄られた教授のお話しをうかがって、来るのが夢だったのだ。 

バス停でどちらかな? と方向をかんがえているとドイツ人らしい人が日本語で「ニーチェハウスですか?その道を行って左手」と教えてくださった。おかしい!道の右手とあったはず、とおもいながら、示された道行くと写真でみたとおりの家が 道の右手にあったのでおかしくなってしまった。

 
 ニーチェ・ハウス

白い二階家で書斎などそのまま残されていた。興味をもったのが,よく読まれて開ききった聖書。 
神は死んだと言いながら、聖書はしっかり紙背に徹するまで読んでいたのだろう。かなり感動した。
7年くらいニーチェは夏はここで過ごした。単に哲学的思索からだけでなくこの美しい景色、そしてルー・サロメとの幸せなひと時、そういうことが 永劫回帰の思想を生む要素になったのではないか、と非哲学的な私は直観した。 

18時発のバスに乗り 1830分ごろサンモリッツに戻った。

ホテルには今日主人が到着することになっている。 お部屋もシングルからツインに変えてもらうよう頼んである。

ホテルに着くと お部屋を教えてもらうと、今朝のお隣の部屋だった。
角部屋で窓が二方向にあり、さらに広い部屋。(前日の部屋写真) 
「荷物は運ぶからそのままにしておいて」と言われたので 本やノートもテーブルにそのままで出かけてしまったのだが、全く同じ位置におかれていた。もちろん箪笥の中の衣類も同じ順番。ビックリした。 主人はもう着いているが散歩に出かけたらしい。間もなく帰ってきた。着いたのが遅かったので博物館なども入れなくて残念がっていた。

今日あたり夕食は外でもよかったが、主人はホテルがいい、というので ホテルにした

主人はスリーコース、私は2コースにしてワインはハーフボトル。計113SF。